数理アート作品集

回転の軌跡

原点を一端として回転する2本の線を合成した線は、もとの線の回転速度比の違いによって異なる軌跡を描きます。下のアニメーションは、回転速度の違う2本の線と、それを足し合わせた線(赤)が描く軌跡の様子。


青:1回転 緑:2回転


青:1回転 緑:3回転


青:1回転 緑:-4回転


時計の長針と短針も同じ点を共有して回転しており、2つの回転比は12です。長針と短針の合成が描くパターンは下のようになります。

回転速度の比が違うだけでずいぶんと違った雰囲気の図形が描かれます。また、どの図形もなんとなく調和のとれた綺麗な形をしているように感じます。こうなると、他にどのような速度比のときに、どのようなパターンが現れるのか観てみたくなります。それを調べて図示したものが下。下の図は、原点から伸びた同じ長さの2本の線が、原点を中心としてそれぞれ異なる角速度で回転するときに、それぞれの線の周回数の組み合わせによって生成されるパターンを表にして並べたものです。



こうして並べると壮観。回転速度の比率を変えるだけでこのように多様なパターンが得られることに驚きます。中には植物の花びらやつぼみを思わせる図もあります。

表上の行数/列数が各パターンの回転速度比となっています(上右半分は比の符号が負)。図形として得られるパターンの違いを見るには、回転速度比が既約分数(それ以上約分できない分数)の形で表されるパターンのみを調べればよいということになります。


実は、上の図はすべて2本の回転速度の比が有理数のものばかりです。回転速度比が有理数の場合、2本線の合成線が描く軌道は周期的となり閉じた曲線となります。
もしも速度比が無理数の場合、2本の線はいくら回転しても絶対に、同時刻に同じ場所に戻ってくることはありません。この結果、2本の合成線が描く軌道は、2本の線の長さの和と差をそれぞれ半径とする2つの円で囲まれた環状領域で、いたるところ稠密な曲線となります。「稠密」とはぎっしり詰まっている。つまりどの部分も軌道で埋め尽くされるということ。これを敢えてイメージするために描画した絵が下。

この図は長さの違う2本の直線を、回転速度比を√2(無理数)で回転させたときに、2本の直線を足し合わせた直線が描く軌跡を、薄く重ねて描いていったものです。同じ場所で、同じ時刻から回転を始めた2本の直線は、絶対に、再び同じ場所で重なることはありません。この結果、どの部分も線で埋め尽くされます。この図は描画を適当な時間で打ち切っています。もし描画をもっと長く続ければ、紫色の部分はどんどん色が濃くなっていき、やがてベタ塗り状態となります。

参考図書

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