数理アート作品集

反応拡散系の大域的分岐構造

微分方程式に含まれるパラメータを変えたときに、解の安定性や個数が変化することを分岐といいます。

上の式はBZ反応という化学反応を表したオレゴネータというモデルに拡散項(Du, Dvが拡散係数)を付けたもの。オレゴネータについてはここが詳しい。このような反応項と拡散項からなるモデルは反応拡散系と呼ばれます。

反応拡散系には分岐が多く存在することで知られています。この式で、 b の値をパラメータとして少しずつ変化させたときの分岐構造を、数値計算で求めて図示してみた。

縦軸には、解形状のL2ノルムをとり、安定点を黒、不安定点を灰色で描画しました。
これではなんだかよくわからないので、解形状の左右への偏り具合を示す軸を追加し、上の分岐図を3次元で表示したものが下。

カブトエビ?に似た、複雑な解構造が出現しました。拡大してカラー表示してみましょう。赤が安定、青が不安定点を表します。

深海に漂う生物を思わせます。
拡大しても複雑すぎてわかりません。色々な角度から鑑賞してみましょう。



単に複雑なだけでなく、どことなく美しさも感じます。はじめに載せた方程式にはこのような超複雑で美しい構造が内在しているのです。
ちなみに定常状態(上図の青や赤の線上の点に対応)にある時の解形状は、主には以下のようなものがありました。

左右対称な形状を持つ状態のみを表示した分岐図を拡大したところ(下の図)、上の図中の、異なるモードの形状を持つ状態が同一パラメータ上に存在する様子がわかりました。上と下の図のアルファベットは対応。

実際、パラメータbを0.57付近にとって、系の時間発展をシミュレートすると、初期状態によって、上で示したような、谷の個数が1個(A),2個(E),3個(G)、 山の個数が1個(C),2個(F),3個(H)といった、多くのパターンの形状に落ち着くことがわかります。

分岐図ではわかりづらい、分岐曲線の交差構造を示した図が下。この図は、解析を進める上で作成したもの。黒い点が分岐曲線の交差点で、追跡のための管理番号を付けています。

ついでなので、上図の全点における、解の形状リストを載せます。


















なおこれらの解は、系の状態が完全に静止する場合のみを求めた結果であり、周期解は解析の対象としていません。

計算は予測子修正子法を実装した自作プログラムで行ないました。解析する空間は1次元。境界条件として自由端。0.5の長さに設定した空間を60個の格子に離散化して解析を行い、式の定数は次のとおりに固定しています。

実は、ここに載せた結果は、思い出すほどイヤになるほど地道な作業を続けて得たものです。計算といっても自動ではなく、手作業でパラメータを微調整しながら枝分れする大量の曲線を1本1本トレースする必要がありました。この作業の結果に何の意味があるのかというと、何の意味もなくて、少なくとも工学的にはこれが何かの役に立つわけでもなく、ただ解構造を観てみたいという純粋な好奇心でやった作業です。ただもったいないからここで公開している。ちゃんとまとめて発表できないだろうかと考えています、、

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