数理アート作品集

定常波のつくりだす形

波のかたちの「山」や「谷」の部分が進まずに、その場に留まったまま振動する波を定常波といいます。

一番シンプルな定常波のイメージは、はじかれた弦と同じ1次元の波。


山が1個の定常波

山が2個の定常波

山が3個の定常波

定常波には波形の山の数に対応して振動のモードが沢山存在します。振動モードに応じて変化する波のかたちには様々なバリエーションがあり、見ていて飽きません。

下は周期境界条件を持った波。振動する水滴のイメージ。


1

2

3

4

5

次は、正方形の領域に張った膜が振動するイメージ。


1-1

2-1

3-1

定常波は領域の形が単純であれば波動方程式 utt=△u を変数分離法で解くことによって、解析的に求めることができます。上のアニメーションは数式として求めた波動方程式の解析解から生成しました。水色がでっぱっている部分、青色が凹んでいる部分を表します。

定常波を足し合わせると下のように別の形の定常波を作ることができます。


2-1
+


1-2
=


2-1,1-2

2-2
+


3-1
=


2-2,3-1

足し合わせるモードによっては、下のようにもっと複雑な形が生まれます。


1-1,3-3

3-7,7-3

1-7,7-1

5-7,7-5
このような不思議な波の形は、コンピュータによる計算だけでなく、現実でも確認することができる。下は、砂をまいた鉄板を様々な周波数で振動させた際に現れる模様の写真。

(C)MIT Phisics Demos

鉄板を適当な周波数で振動させると、定常波と同じ揺れ方をします。その結果、鉄板表面上の振動する「山」の部分にある砂がはじかれて、振動しない部分(節)に集められ、節の形が上の写真のように模様となって現れます。
先ほどの波の図とこの写真を重ねてみましょう。

だいたい形状が一致しています。もちろん写真と一致するように解のパラメータをいじってモードを決めたわけですが、波動方程式の解といってもただ三角関数を組み合わた単純な式が、このような複雑な形状を生み出し、さらにそれが現実世界の出来事と一致することに面白さを感じます。

円領域の波動方程式もベッセル関数を使えば解くことができます。下の図は極座標で書かれた波動方程式の解を求めて描いた円形膜の振動の様子。


1-0

2-0

3-0

1-1

2-1

3-1

1-2

2-2

3-2

これだけでも植物や、もしくは受精卵の分裂を思わせる味わい深い形。これらを足し合わせるとさらに奇妙な形が現れます。


7-1,2-4

5-3,1-7

11-9,9-11

9-9,2-2

左下の図(11-9,9-11)などは、まるでイソギンチャクの口のようで不気味です。

これまで見てきた定常波は、いずれも領域の形が四角や円といった単純な形であったため、波動方程式の解を解析的に求めることができました。 しかし、もしも領域の形状が少しでも複雑になると、解を求めることができなくなります。

ただ領域の形状が複雑な場合でも、解を「解析的に」ではなく、数値的に求めればその領域に発生する定常波を近似的に求めることができます。具体的には、変数分離法によって解析解を求める際にでてくるヘルムホルツ方程式について、空間を任意形状の境界条件を考慮して離散化したものの、固有値と固有ベクトルを数値計算によって求めれば、望みの形状上で発生する定常波を鑑賞することができます。

下は、固有値を数値計算によって解くことによって求めた、テトリスのブロックのような領域上に発生する定常波。固有値が小さいものから順に、20個のモード並べてみました。

バラエティに富んだ形が得られました。固有値が大きくなると波の形も複雑になります。中にはシマウマのような、動物の体表に現れる模様を思わせる形もあります。線形代数のテキストで固有値を求めよと言われても、それに何の意味があるのか理解できずに退屈でしたが、固有値問題が上のような不思議な模様と結びついていることがイメージできると、とたんに固有値というものにも興味がわきます。

下は「WAVE」の文字領域に発生する定常波を求めた例。

















































































座標系や領域を変えることによって、波動方程式という1つのシンプルな規則から、こんなにも味わい深い多彩なパターンを生み出すことができるのです。

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